第57話


「何でっ…って。それが恋人とのはじめての朝のはじめて交わす言葉かよ」



禅夜はちょっと面白そうに片目を細めて笑う。




「てか私たちいつ恋人になったの」



「え!違うの…?いつって昨日だけど」



やっぱりズレてるし。




「だって俺言ったじゃん。この部屋に来てくれたらOKと受け取るって」



聞いたけど…



でも七年前の話だし、第一あれはその場の軽い言葉かと思ってたのに。



「いえ…帰ったかと思って…」



「はぁ?何それ。俺ってそんなひでぇ男に見える?



三田とは違うぜ」



三田……ああ、いたわね、そんな男も。



「いえ…でもね」



禅夜はいつも私の予想外の行動を取る男だったけれど、最後の最後まで予想外だった。



「か、帰らないと怒られない??マネージャーさんとかに…」



髪を掻き揚げて心配そうに禅夜を眺めて―――



気づいた。



私の左手薬指に見覚えのない大きなダイヤの指輪が光ってるのを。






「え―――………」






目をまばたいて朝日に反射してキラキラ輝くそのダイヤモンドを見つめていると



「夜、環―――『俺と結婚してくれる』って言ってくれたじゃん」



け、結婚んんんん!!!




「い、言ったぁ!?」



思わず自分を指差すと、彼は片目を…以下略。



とにかく説明するのも面倒なぐらい私は驚いている。







「俺と結婚してくれる?って聞いたら、



『うん』て。




ひでぇ。あれ嘘??」




禅夜は顔を覆って泣きまね。



た、確かに最後に『うん』て頷いたのは覚えてる…けど。




あれ、プロポーズだったの!!




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