第55話


手を伸ばせば彼の肌に触れられる距離。



彼の熱を持ったような熱い手が、私の足を撫でられる距離。



口付けを交わし、互いの脚を絡ませて



翼をくれた、と言うその背中に手を這わせるとさらさらと心地よかった。



ミルク色のローブが滑って彼のむきだしの肩を撫でると、彼は三日月のように目を細めて



くすくすと甘い囁き声で私の耳元で笑う。



彼の手がせっかちに私のローブの合わせ目に侵入してきて





「もう俺のものだから」





彼は勝気にそう言って目を伏せるとふっと口元に淡い笑みを浮かべた。





「それはこっちの台詞よ」




彼のファンは何万と居るけれど、この瞬間だけは私のもの。



繋がる瞬間彼は言った。



「俺はマジだよ」



「……うん」



久しぶりの侵入に痛みと心地よさが波のようにやってきて、頭がおかしくなりそうだ。



ベッドが軋む音が静かな部屋に響いて



限界に達する間際に彼はまたも言った。







「環、俺と―――――………」








何も考えられない快感の波に支配され、私は彼の言葉を聞き取ることができなかった。



それでも条件反射に



「うん」




それだけ答えていた。





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