第49話


「え……?」



「入れて」



彼は切れ切れの息で、かすれた声で何とか言い、わけも分からず私は彼を迎え入れ扉を慌てて閉めた。



走ってきたのだろうか、それともライブの名残だろうか、キャップを取って軽く頭を振ると彼の額には大粒の汗が浮かんでいた。



七年前と同じ香水と、爽やかな汗の香り。



「どうして……あんた違う部屋でしょ?大丈夫なの、こんなところに来て」



七年目に交わす言葉だと言うのに、感動とか緊張とかすっ飛ばして、思わず七年前と何一つ変わらない口調で彼を咎めた。



可愛げのない女だと思われるかもしれない。



けれど彼は気にした様子でもなく



「環変わってないね」



片目を閉じて小さくウィンク。



違う部屋ナンバーが載ったカードキーをさっと掲げ、そのカードキーにチュっと口付けをすると



彼はそのカードキーを指で弾いて、ゴミ箱に投げ入れた。



「俺の部屋なんて今日は必要ないし。



ここが今日過ごすところ」



甘い言葉とは反対に無邪気に笑った禅夜はテレビに目を向け



「今日の終わりをお知らせします。10、9…」



付けっぱなしにしていたニュースからキャスターがカウントダウンをはじめる。



「ヤベ」



彼は急に慌てだして床に膝まづくと、薔薇の花束を私に向けた。



え…!



分けもわからず目をまばたいていると





.:♪*:・'゚♭.:*・♪'゚。.*#:・'゚.:*♪:・'.:♪*:・'゚♭




~♪「Happy Birthday to you~



Happy Birthday to you~




Happy Birthday Dear Tamaki~」





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