第45話
それは聞いたことのない曲、おそらく新曲か何かなのだろうか。
ゆっくりとしたバラードに合わせて、会場の中、ペンライトの光が左右に揺れる。
~♪
『君は笑うかもしれない。
だけどほら、
今
君をたくさんの光が包んでいる。
暗かった君の心を光で包み、冷たい手をとって僕がこの手で温めたい。
たくさん待たせた分、たくさん待った分
愛を込めてその手を』~♪
曲の終わり、禅夜はギターを鳴らして立ち上がり、ゆっくりとお辞儀をした。
「ゼンっ!ゼンーーー!!」
すぐ近くで禅夜を呼ぶ女の子が居て、私は慌てて涙を拭った。
『ありがとうございました~!ただいまの曲はゼンの即興…と言いたいところですがぁ、
実は七年前から温めていた曲みたいです』
アオイが説明をくれて、気付いているのだろうか私の方をちらりと見た。
七年前と代わらない様子で小さくウィンクを飛ばしてきて、周りのファンの子たちが
「キャー!!アオイっ!」
と手を振っている。
『ゼンが会場のみなさんに贈るラブバラード、みなさんの心に響くのを願っています』
響いてきたよ、ここに。
私はそっと胸を押さえ、
『七年間、この曲が世に出るのを
僕らメンバーは待たせられましたよ』
アオイは意味深に苦笑。
私も苦笑。
待たせてごめんなさい。
でも
今日会えて良かった。
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