第43話


ライブも半ばになると、MCが入ったりと、ちょっとだけ落ち着いた雰囲気。



『こんばんは~!!Placeです!』



メンバーの声に



「キャァァアアアア!」



一向に衰えを見せないファンの子たちの歓声がホールを響かせた。



メンバーそれぞれ簡単な自己紹介、そして近況などが報告された。



ときおり笑いが起こるほど和気藹々としていて、その会話の中ゼンはやはりイメージとして貫いてきた「クール」を装っているのか、ほとんど口を開かなかった。



何よ、かっこつけちゃって。



クールぶってるけど、私は…私だけは本当の禅夜を知ってる。



良く喋るし、良く笑うし、ちょっとズレてるし。



てか天然??



可愛いとこ、た~くさんあるって知ってるんだから。



『え~、今日は特別にゼンから贈り物です!』



リーダーのアオイがマイクで伝え、場内がまた暗くなった。



「「え!何なに!?」」



方々でファンの子たちの声があがり、いつの間にかステージに立っていたのはゼンだけになった。



明るいスポットライトだけが彼を照らし出し、彼は椅子に腰掛け、アコースティックギターを持っていた。



「ゼンてギター弾けるの!?」



「うっそ!超貴重じゃん!はじめて見るよ」



女の子たちがざわざわと賑わいだした。



私もはじめて見る―――



彼はアコギを抱えながらスタンドマイクを引き寄せ、






『大切な人に贈ります。感謝を込めてあなたに』






スタンドマイクを引き寄せて息を吸い込むと、禅夜はギターをかき鳴らし、



美しい弦の和音に乗せて歌いだした。




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