第36話


「それより見て!じゃーん♪」



禅夜は嬉しそうに言って、女性ファッション雑誌を広げた。



それは私が記事を載せている雑誌で、最新雑誌の開いたページは私が担当したページだった。



彼ら五人の個別の顔写真と、五人揃ってのポーズ写真が一枚載っている。



「ちょっとやめて、恥ずかしいから」



私は慌てて顔を背けたけれど



「恥ずかしいのは俺の方じゃね?だって自分の写真が載ってるし、書かれてるし、丸裸にされてる感じ」



「丸裸ぁ?」



「丸裸じゃん?



“ゼンの声は心地よいテノールの声。きれいな高音とくすぐるような低音が漣のように耳に心地よい。



誰もが目に留める華やかな顔立ちと、しっとりとした声は女の子にギャップ萌えをもたらしくてくれるでしょう”って」



ギャー!!



「ちょっとマジでやめて!読み上げるのはダメ!」



自分でも赤面してしまうような文面は、一人真夜中にオフィスでこもって書き上げたもの。



「そんなこと想ってくれてたんだね~環。



環の本心が知れて嬉しいよ。



でもさ~お互い裸になるんならベッドの上の方が良くね?」



さらりとそう言われて



またこのアイドル様は…と若干しらけた顔で禅夜を見上げると



「『からかうのはやめて』だろ?



聞き飽きたよ、その言葉。最初からからかってねぇし」




禅夜は片目を細めて僅かに眉の端を吊り上げる。



何となく分かった。



彼のそれは





不機嫌の表れ、だと。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る