第27話


「ゼンの人生だから、俺があれこれ言える立場じゃないけど、



でも俺やっぱり五人で活躍したいんですよ」




いつまでも五人で。





「Placeの曲にはゼンの独特な高音が必要なんですよ。あいつの声が入ってはじめて完成する。



生意気にアーティスト気取ってるって思われるかもしれないけど」



リーダーの子は恥ずかしそうに笑って、私は頭を横に振った。




「あいつの声、いいでしょ?」




そう聞かれて



「ええ、とても」私は素直な意見で即答した。



「まぁ声だけじゃないですけどね。ずっと一緒に居たいなんて言ったら子供みたいで



声を言い訳にしてるだけかもしれないけど」



「そんなこと……ないです」



私は紙面に走る上辺だけのデータで彼らを見ていたけれど、もっともっと掘り下げていくと、彼らは顔以上に声以上に魅力的な何かがある。



私は他のメンバーとふざけてじゃれあっている禅夜をぼんやりと眺め、



その視線に彼が気づいたのかふと振り返り



「ばいばい、またね。環」



口ぱくでそう動いた。





彼らの魅力―――禅夜の魅力




それを伝えたい。






それが私の情熱。




最後の最後に



「あ、それと。そのストール似合ってますよ。



ゼンの好きそうなデザインだけど、あなたの方がよほど似合う♪」




いたずらっぽくリーダーに微笑まれて、私は思わず目を開いた。



き、気付かれてる…!?



そう思って視線を泳がせていたけれど



「付き合い長いんで、ゼンの女性のタイプも知ってます。年上のちょっと強気そうな美人」



リーダーは禅夜とは違った色気のある視線で小さくウィンク。



バカげた疑問だったけれど、




「好き」







あれはどこまで本気なんだろう。



私は禅夜がくれたストールの端をそっと握り締めた。




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