第20話


「と、年上の女をからかってるんじゃないわよ!



私のどこが可愛いのよ!」



「年上って言ってもそんなに離れてないじゃん?」



「あんた二十歳でしょ?私は二十二よ」



短大卒業後この会社にすぐに勤めだして二年。芸能コーナーを任せられるまでに昇りつめるまでには割りと短いキャリアだけど



でもそれなりに努力もしてきた結果だと思ってる。



だから「冷たい女」呼ばわりされてるんだけどね。



「環は可愛いよ。



でも、このひっつめ髪を解いて……あとブラウスのボタンももう一つ外したら」



そう言って彼は私の髪を留めていたクリップをそっと外した。



パサッ



髪が肩に落ちて、ついで彼は言葉通り私の胸元のボタンを一つ外す。



「ちょっ!何してるのよ!」



さすがにぎょっとして慌てて彼の手を遮ろうとしたけれど、彼の力強い手はそれを阻んだ。



大きな目をわずかに伏せて、長いまつげが頬に影を落とす。




「黙っててよ」



真剣に言われて、私はまたもドキリとして大人しくされるがまま。



だけどボタンを外す以外のことは何もするつもりがないのだろうか、彼はボタンを一つだけ外すと手を離し、



彼の首に巻きつけてあった白と黒モノトーンの幾何学模様柄のストールを取り外した。




皺加工がしてあるそのストールを私のスーツのジャケットの上からそっと掛けて



「ほら、この方がいいよ」



彼は満足そうに微笑んだ。



スカーフのようにぶら下がったストールは私の黒いスーツに華やかさを散らした。



「俺より環の方が似合ってるし、それあげる」



そう言われて、私は慌てた。



「いや、それはさすがに!てか私が持ってたら変な風に疑われるじゃない」






「疑われてもいいよ?俺は。




環が迷惑だって言うならそれはちょっと悲しいけど。




それにそれ、今日買ったばかりのヤツだから、誰も知らないし」




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