第18話
「管理職になってお金貯めてマンション買って?
その現実的な目標もいいけどサ
もっと楽で幸せな近道…あるじゃん」
岩本 禅夜が子供のように無邪気に笑って、またも私の頭をぽんぽん。
「楽なことって……?」
今度は振り払おうとせずに私は彼の言葉を怪訝そうに聞いた。
「誰かに寄りかかればいいんだよ。
環は寂しいって言った。
だったら誰かの手に縋ればいい」
ああ、彼のテノールはこんなときまでも心地よく胸に響く。
声なんて―――必要ない、なんて思ったけれど、私は彼のこの声の魅力を文章に起こせる才能があれば
どんなことをしてまでも読者に伝えるだろう。
こんなときまで雑誌のことを考えてる私…そこまで愛情がないと言ったけれど
結局のところ、やっぱりこの仕事が好きなんだろう。
それならなお更、彼を逃がすわけにはいかないのだ。
「ねぇ何で逃げたいとか言ったの?インタビューなんて面倒くさい?」
今度は私が聞き役になって彼に問いかけると
「んー……なんか突っ走ることに疲れちゃったって言えばいいかな」
「アイドルを辞めたいってこと?」
私が聞くと
「まぁ早い話そう。俺の歌やダンスなんてみんな興味ないし。
大体俺なんてPlaceの中で影薄いし。いなくなっても誰も気にしないっしょ。
インタビューなんて無意味だよ」
彼の言葉を聞いてまたも
ブチっ
私の中で何かがキレる音がした。
だって、
まるで私の仕事を否定されたみたいだもの。
あんたには無意味でも、私には意味があることなのよ!
アイドルの気まぐれな我侭に付き合ってられるほどの暇はないっつうの!
「しっかりしなさいよ!
あんたプロでしょ!!」
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