第17話


元彼から―――黙って身を引いたのはあいつに浮気相手が居たから。



みっともなく縋り付いてあいつを取り戻そうと、かっこ悪いことしたくなかった。



ああ、またも変なプライドが私を邪魔する。



そう思ったけれど、プライドを捨ててまで縋りつくほどの男でなかったのは確か。



男なんて信じられなくて、仕事を言い訳に逃げていたのかも。



「私はね…



このまま突っ走って、管理職になってお金貯めて、マンション買って



女一人でも立派に生きていけること証明してやりたいの」



「うん」



私―――何言い出すんだろう…自分でも呆れる。



仕事ほっぽって、取材相手に人生相談…ていうか完全に愚痴ね。



けれど



彼は私のバカげた夢を笑い飛ばしたりはせず、頷いてくれた。



アイドルさまから見ればこんなのちっぽけな夢かもしれないのに、それでも真剣に聞いてくれた。




「そしていつか元彼に再会したとき言ってやるの。



『独り身は自由で楽よ~?マンションもあるし、なんといっても気楽だしね』



って。



そのときそいつはきっとつまらない女と結婚してつまらない結婚生活を送っているだろうことを想像して」



言った後になって後悔した。







「私ってイヤな女……」






こんなんだからまともな恋愛できないんだ。



自分にも他人にも素直になれない。



本当は今の仕事が好き。恋もしたい。



よくばりなの。








「本当は寂しいのよ。




さっきのマンション購入の夢は、夢じゃなく目標。



そうじゃないと現実に生きていけない。


だからそう言って逃げてるの。



本当は



大恋愛とは言わないまでも好きな人と結婚して、賃貸アパートで細々暮らそうが



自分を必要としてくれる人と一生一緒に居たい。





こんな女が夢みるのはバカげてる?






でもそれが本当の夢」





誰かに必要にされて、



誰かの特別席に座りたい。




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