第14話
顔ちっさ。
睫も長いし、肌は女の私よりもきれい。
香水か何かだろうか凄く爽やかで心地良い香りが鼻腔を優しくくすぐり、唇と唇が触れ合う瞬間…
ちょっ――――!
言葉よりも先に
足が出てしまった。
バンっ!
私は足の裏で彼の顔を押しのけ、
「いっっっっってーーー!」
彼は大げさに痛がってみせたものの、私から手を離さず近くにあった低めのラックに私の体をそっと下ろす。
「マジで痛いし。てか顔はやめてよ。これでも商売道具なんだよ」
蹴られた頬を撫でさすりながら目を僅かに吊り上げ私を睨んでくる岩本 禅夜。
何なのこいつ。
「何なのあんた!何様のつもり!」
って、アイドルさまか。
「ちょっとモてるからっていい気になってんじゃないわよ!
逃げ出したいとか分けわからないこと言って、暇つぶしかゲームか何だか知らないけど女をからかってるんじゃないわよ!
大体ねぇ、女だったら誰でも堕とせるとか思ってるのが間違いよ!
思い上がりもいいところだわ。
どうせ印象的なこと言えば、女が釣れるとでも思ってるんでしょ?
ふざけんな!
こっちは仕事なのよ」
言いたいことを一気に喚くと、幾分かスッキリした。
スッキリしたけど…
ぜぇはぁ……
私はかっこ悪く息切れ。そもそも誰かに怒鳴るなんてあんまりないことだから。
影で何を言われていようが、気にしない素振りを見せるのは慣れている。
「ちょっと…大丈夫?」
彼が怪訝そうに目を細めて私を覗き込んでくる。
何なのよあんた…
何なのよ…
「私を誰だと思ってるの?
どーせ社内イチ冷たい女よ?結婚したくない女よ?
影でランキング付けられて、その記録を更新中よ!
『絶対彼氏は三年ぐらい居ないだろう』
『夜は寂しくコンビニ弁当』
ええ、当たってるわよ!殆どね!!だけど彼氏が居ないのは二年よ!残念ねっ
はっ!
こんな女、誰だって口説かないわよ!
分かってるわよ、私だって。
だからあんたの簡単な口説き文句にも乗りませんよ!」
ああ、私……もう言ってること滅茶苦茶……
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