第12話


大きな少し釣りあがり気味の黒い瞳。その上には意思の強そうなキリリとした眉。



整った鼻梁に、思わずキスしたくなるような少し肉感的な唇。



小造りの顔に、やや大きめのパーツが散らばるその顔は生意気そうであったが惹かれる何かがあった。



間違いない…



だって写真で確認したもの。



私はもう片方のパンプスを脱いで階段を慌てて降りると



「ちょっと岩本さん!どちらにいらしたんですか。



インタビュー…」



言いかけて



「あ、担当者さん?」



と、これまた平和でのんびりとした答えが返ってきてイラっときた。



ちょっとかっこいいと思ったのは違いないけどね、私はミーハーなファンじゃないの。



おまけにイヤになるほど現実主義者。






彼には恋しない。





絶対に。






それでも相手は客。私は不機嫌を押し隠し、



「他のメンバーの方はお待ちですよ…」



言いかけたが、その唇にそっと人差し指を突きつける岩本 禅夜。



「しー…」



「は?」



隠れんぼでもしてるの?別に君がどこで隠れんぼしようと鬼ごっこしようと私には関係ないけど、今だけはやめてよね。



そう言う意味の視線で怪訝そうに岩本 禅夜を見上げると






「おねーさん。





逃げ出す方法、教えてくれない?」





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