第11話


「わ!!」



階段のステップから足を踏み外して、10cmヒールのパンプスが脱げる。



「キャァ!!」



その衝撃でスマホを手から滑り落とし、



ガシャン!



派手な音を立てた。



私自身は何とか手すりにしがみついて落下を防いだものの、スマホはもうダメだ。




ついで




「痛っ!」




階下で小さな声が上がり、声のした方を見下ろすと



「おっと」



転がったパンプスをキャッチしてくれたのは






若い男―――……






「良かった。靴無事だよ?」



男は私のパンプスの踵を掴み笑顔で私を見上げてくる。



印象的な大きな目が人懐っこく細められ、無邪気に笑うその青年。



良く透るテノールの声。



僅かにエコーがかって心地よく響いたのは、階段と言う閉鎖的な空間が生み出した反響か。



…て、声なんてどうでもいいって。



「良くない…どっちかっていったらケータイを助けてほしかった」



いや、良くないことない…



って日本語変だけど。






岩本 禅夜いわもと ぜんや―――!!!



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