第10話
でもこんな理不尽なことが社会では普通に起こり得るのだ。ここでは男も女もない。コンプライアンスが重視されている世の中でもパワハラ、セクハラは当たり前の所謂ブラック企業。雑誌社の名前だけは大手だし給料も安くないから皆以外、
文句ひとつまともに言えず、私は言われた通りの仕事をこなすしかない。
用はミスしなければいい話だが、それが難しかったりする。
だって相手は対、アイドルさま
なのよ?
―――打ち合わせ用の広い応接室。
ソファセットがあって、その長いソファにさっき確認したメンバーが座っていた。すでにカメラマンも到着していて後はインタビューのみ。
雑誌の取材、と言うことは慣れているのか特別緊張した様子でもないし、かといって砕けすぎた印象もない。
いわゆる、典型的な「よいこ」タイプだ。
ほっ
とりあえずは第一関門突破。
「こんにちは『Place』のみなさん。
わたくしは安藤 環と申します。このたびみなさまのインタビューを受け持たせてもらいます」
名刺を渡してソファのメンバーを改めて眺め…
ん??
私は目を凝らした。
1、2、3、4……
一人足らない!!?
成人男性が五人はゆうに腰掛けられるソファに、一つだけぽっかりと開いた空席。
「あー…すみません。ゼンのヤツがまだ来てないみたいで…
ケータイにも繋がらないんです」
リーダーの子が申し訳なさそうに謝って、
「いえ…!わたくしが確認してまいりますので少々お待ちを!」
私はアシスタントを残し、一人応接室を飛び出した。
冗談じゃない!五人揃ってないと意味がないのよ!
そのまま上階にあるオフィスに移動しようと思ったものの、運悪くエレベーターの点検作業の時間帯だった。
何でこんなときに!
なんて運がないの!
仕方なしに私はエレベーター脇にある階段を駆け上り、オフィスに移動すると彼らに関するファイルを引っつかんでまたも逆戻り。
「事務所の連絡先…!あった!!」
ファイルをめくりながらスマホを取り出して事務所に連絡しようとしていたのが間違いだった。
運の悪さは、この日私をさらにどん底へと―――
突き落とす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます