空席のソファ
第9話
■空席のソファ
「Place、本日14時より打ち合わせ取材、来社」
分厚いスケジュール帳を確認して、当時まだ新卒の男の子をアシスタントに持っていた私は
五人の簡単なプロフィールや顔写真が載った書類の束をめくり、
「ふーん、このルックスだったら売れそうね」
彼らの顔を確認した。
どうやら彼らは歌もダンスもかなりレッスンを積んでいて、この芸能プロの秘蔵っ子みたいだ。
厳しいと有名の芸能プロの中、寄せ集められた彼ら五人は言わばアイドル界のエリートとも言える。
そんな彼らが今後売れないと言うことはない。
今のうちにツバつけとかなきゃ。
けれど私に歌やダンスなんて関係ないし、興味がない。
雑誌に載るのは彼らの顔と数点のポーズ。あとはインタビューや新曲のCMの文字だけ。
「いい?ヘマしないでよ?Placeは駆け出しとは言え、すでに一部に熱狂的なファンが居るのよ。
これを掴んだら私は昇進」
「ヘマしたら…?」
アシスタントは自信無さそうに肩をすくめ
私は自分のクビを手刀で斬る真似をした。
「マジすか」
「マジよ。さすがにいきなりクビにはならないだろうけど、飛ばされるのは間違いなし。
だからしっかりね」
「……はい」
アシスタントはますます自信がなさそうにうな垂れ、
「しっかりしてよ。何が何でも成功させなきゃ!」
私がこうまでこの『Place』にこだわるのは彼らの熱狂的なファン……ではもちろん無くて、
数ヶ月前から私の受け持っている芸能コーナーで起用した新人モデルの男の子たちがあまり受けが良くなかったから。
今の女の子たちは目が肥えている。
彼女たちは「光る」何かを見つけるのに長けていて、何かがないとそれだけで終わってしまうのだ。
紹介されたモデル事務所から苦情が出たほど。
「全然売り上げが伸びない」のは雑誌のせいじゃないけれど、それを判断できなかったのは私のミス。勿論、雑誌の売り上げも下がった。
と言うことで、編集長から再三に渡って
「必ず売れる子を載せろ」なんて無理な注文されて
しかも
「次、事務所から苦情が出たらお前は異動だ」
なんて脅されたら、私も必死になる。
てか、こんな理不尽なのアリ!??完全なるパワハラだ。
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