第4話


「会えるかも」なんて思い上がりで、また「彼」と一緒に仕事をしたい、まだ彼の好きだったバリバリ働く女でありたい―――



プライドが邪魔して、変な夢見て



でもそれは思い上がりでしかない。



実際はひと月に何千と投稿のある写真から「これ」と言う一枚を選別して、もっともらしい原稿を書き、読まれもしないコーナーに記事を載せる。



それを全部一人でこなさなければならない。



プライドと引き換えに私は自分の時間と生活を犠牲にして、疲れ果てていた。



どうせがんばったって読まれなもしない一ページなのに。








逃げ出したい。





はじめて「あの時」の「彼」の言葉の意味が分かった。



逃げ出して、結婚相談所やマッチングアプリで紹介された自分に見合う無難な人と出会い、結婚する。



それもいいかも…婚活しよっかなぁ



…半ば諦めかけていたとき。




一人のマンション…誰も居ない暗いマンション、



「おかえり」と出迎えてくれる人のいない寂しい玄関先でヒールの靴を投げ出し、



ポストに投函されていたダイレクトメールの山をダイニングテーブルに投げ出し、



もうどうでもいいや、って気分になってるとき。







それを見つけるまでは。







白い封筒。



一年に一度だけ送られてくるそれ。



私はその封筒の端を目に入れダイレクトメールの山を掻き分け、その手紙を手にとった。



住所はこのマンションが記されていて、






安藤 環あんどう たまき 様”





と「彼」直筆の文字を目に入れたとき、何かがこときれた。



私は封筒の封を切り、中身を取り出すとやはり毎年送られてくるライブチケットとメモが一枚。



“いつもの部屋にチェックインして”



と書かれていて、



「いつも…って一度も私たちあの部屋で会ったことないじゃない…」




思わず独り言を漏らした。



でも『いつも』で通じるのは、指定されるホテルと部屋番号がいつも一緒だからだ。



チケットの日付は






―――9月18日。







私は目を細めてカレンダーを目配せ。



「彼」に会うのは





実に簡単なことだったのだ。






必要なのは一歩だった。




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