第3話


会社が「自主退職」を促しているのは分かりきっていた。



それでも、いくら部署を変え異動させられようと降格扱いされようと、その度に「なにくそ」としがみついていたのは私の意地。




この九年彼氏なし。



毎年会社の「社内イチ冷たい女」または「結婚したくない女」ナンバー1を目下更新中のこの私。



あとに残るのは仕事だけでしょう?



なんてかっこつけて言うけど、そんないいものじゃない。



てかこの歳で転職とかできるほど世間は甘くない。



大手出版社の経歴を見れば、経験優遇されるどころか「何故退職したのか」と言う理由を問われるに違いない。



用はこの会社で、まるで隠されるようにひっそりと奥まった狭い部屋の、これまた小さなデスクが私の居場所―――



その席を必死で守ろうとしている私は、もっとアホ。





いえ…




本当は期待していた。



このままがんばればまた「彼」に会えると、どこかで期待していた。






転職もできないような女が見る夢は





もっと馬鹿げている。







大好きな人のお嫁さん。




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