第2話


10cmヒールを鳴らし、毎日一房のほつれもなく髪をまとめあげ、窮屈な細身のスーツに身を包みながらも



私の仕事は、某主婦向けの雑誌の「今日の一番」と言う街の風景を載せたたった半ページにも満たない雑誌のコーナーを飾ると言うもの。



二十代前半はそれなりにバリバリ働いていたつもり。



人気のファッションコーナーから、芸能コーナー、いっときはやりがいのある社会記事を扱ってもいた。



けれど私の築き上げてきたキャリアなんてクソみたいなものだ。



と思い知らされた。



三十歳を目前に飛ばされたのが今の部署。



誰も目に留めるようなことが無いような小さなコーナーを受け持って一年。



前は大手出版社の名前が入った名刺を出すのが誇りでもあったし、その名前には威力があり、自信もあった。



でも今は―――





かつて抱いていたあの感情はどこにもない。



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