君は雪の結晶のように溶けて消える。

抹茶 餡子

第1話

第四章 君は雪の結晶のように溶けて消える。


「…雪だ…」

白い息に交えて呟く。

見上げる空は白く、辺りは銀世界と化していた。

手袋をはめた手に、一つ雪が乗る。

だが、それは一瞬の事で、すぐ溶けて消えてしまった。

ため息が、夜空に混じった。


冬になると、亡くなった彼を思い出す。

彼はーーそう、今日のような、クリスマスに二度と出会えなくなってしまった。

クリスマスデートをする予定だった。

けど、彼は来なかった。

ピコン

スマホの通知が鳴る。

彼のメッセージだと思って開けると、緊急速報…今起こった事故について報道されていた。

そこには、彼の名があった。


ジングルベ~ルジングルベ~ル

と言う明るい歌で我に返る。

今日はクリスマス。

キラキラ輝くイルミネーションと人々の幸せそうな、陽気な雰囲気が街を賑やかにさせている。

古そうな本を大事に抱えている少女。

可愛いな、と微笑ましく思いながら、ため息を着く。

更に自分が寂しく思えてきた。

理想と現実は違う。

それは分かってる。

彼が戻って来ない。

そんな現実、私にだって分かってる。

けどーー

ピコン

スマホの通知が鳴る。

でかけた涙を引っ込ませ、スマホを見る。

そこには1件のメッセージ。

「後ろ見て。」

振り向くと、彼が立っていた。

あるはずのない、彼の姿が。

私は思わず彼の名を呟き、駆け寄る。

彼は泣きそうな私の顔をそっと撫でて、手のひらに何かを乗せる。

「…メリークリスマス。」

小さなプレゼントの箱。

「…開けてもいい?」

彼は頷く。

私は丁寧にリボンを解いた。

中から出てきたのはーー

「…指輪。」

キラキラとひかるダイヤモンドが付いた。

「…えっ」

パッと顔をあげると、そこには彼の姿はなかった。

それは、魔法が溶けたことを意味する印。

時計が12時を指した。

私は思わず泣き崩れた。

そっと指輪を握りしめて。

横では大きなクリスマスツリーがキラキラと輝いている。

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