第41話


「……泣いていなさい」



勝手に泣いていたらいいわ。


貴女の嘘泣きくらい見破れるもの。

そもそも涙なんか出ていないじゃない。

せめて涙を浮かべてから言って欲しいわ。



「エーンエーン」



……嘘泣きね。

棒読みにも程があるわよ。



「帰りますよ」

「…生徒会室、寄って行け」



会長はそれだけ言って止めていた足を進め始める。

………帰るって言ってるのに……。

本当に人の話を聞かない人達ね。

仕方がないので後を追う。

その後ろを何故が嘘泣き中の理紗まで追ってくる。

……いったい何時まで嘘泣きを続けるのかしら、この子。


行き着く先は言わずもがな生徒会室で。

初めて入った生徒会室内は、想像以上に豪華な内装だった。

…何故、生徒会室にテレビなんかが、備え付けられているのかしら。

必要ないでしょう?


生徒会役員にはそれぞれ定位置があるらしく、各々が部屋の中に設置された一人掛けのソファに座り始める。

その中で一つだけ、会長の隣に誰も座らない空席のソファがある。

見るにそこが副会長の席らしい。

……今は座らないけどね?


会長が促すようにソファを指すけれど、ちらりと目を向けただけで座ることはせずに、出口に一番近い壁に寄り掛かる。



「……座れ」

「お断り致します。お話があるのなら伺いますから、早めにお願いします」



私は帰りたいのです。

無駄話だったら許しません。



「…分かった」



ちらりと後をついて来ていた理紗を見ると、のんびりと私達を見物している。

……本当になんでついて来たのかしら?

十中八九、面白そうってだけの理由でしょうね。



「今度からお前には送迎を付ける」



端的に本題に入ってくれたのは嬉しいけど、なんかとんでも無いこと言ったわよ、この人。

……送迎って…何よ?



「お断り致します」



絶対に嫌よ!!



「今回みたいな事がまたあるかもしれないだろう。そんな時に応戦出来る奴を付けておきたい」



それは理解出来るわよ。

できるけど……。



「だからといって、登下校を監視されると?」



嫌よ。

ただでさえ女子生徒から目をつけられているのに。



「ああ。外に出掛ける時は俺達の誰かを呼べ」

「嫌です」



そんな面倒臭い事しないと、出掛けられないなんて地獄なんだけど!!

そもそも出掛ける度に生徒会役員呼んでいたら切りが無いわ。



「一人で出掛けて何があるかわからねぇ」

「確かに私は副会長になる事は了承しましたよ?」



したけど。



「行動の制限を受けるとはお聞きしませんでした」



見張りが付くことなんて聞いていない。

最初に条件として言われていたら、断っていたわ。

見張りが付いているのは行動制限を掛けられているのと同じ事よ。

危ない事は理解出来るけど、送迎と言うなの見張りは妥協出来ない。



「……ねぇ、礼奈?」

「…なんですか、り〜ちゃん?傍観者に徹するのでしたら、最後まで静かにしていてくださいますか?」

「いや、単純な疑問なんだけど、双葉に捕まってから逃げられたでしょ?」

「……何故?私は環と二人きり。逃げ出すのは非常に難しかったと思いますよ?」



ずっと見張られてましたからね。

流石に逃げ出すのは難しいかなぁ♪



「だからこそ、でしょ♪」

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