第42話



この子はいったい私のことをなんだと思っているのかしら。



「……さて、どうでしょうね?」



初めての場所で的確に逃げ切るのは難しいかな。

環の他にも不良さん達居たし。

あの部屋出たところで結局は捕まっていたと思うわよ。



「……礼奈の耳のソレ、超小型式GPSだったよね?」



……覚えていましたか。

心配性な方々が特注で勝手に作って贈って来たんですよね。

私の行動範囲がバレて困る人達ではありませんから、言われた通りに毎日付けているのですが。



「くだらない事ばかり覚えて居ますね、貴女の頭は」



こんなところで暴露しなくても。



「ん〜?まあ、今の今まで礼奈大事の人達が動いてないってことは、身の安全は確保出来る状態の拉致監禁。なら、逃げられたでしょ♪」



おじ様達が動いたならね。

確かに秒で逃げられたでしょうね。

あの人達ならヤンチャな不良達相手にしても、秒殺。

未成年を相手にするからでは出さないだろうけど、まあ本気で掛かってきたらめっちゃ怖いから敵には回さない方がいい。



「私が連絡しなければ、動いていたでしょうね。……環と話がしたくて止めました」



海に連絡した時点で私の現状は保護者達に知れる。

連絡出来る状態で、私に帰る気が無いことが分かれば無理に迎えに来ようとはしない。

ある程度は放置してくれる。

それに場所は双葉の敷地内。

焦ることは無いでしょうね、あの人達なら。



「ほら♪……でもさぁ、礼奈?」

「何かしら?」

「今回は自業自得だと思うよ。自分の身は自分で守れるって言ったって、屋上では締め出し食らって熱出して、心配してたら勝手に外出した先で拉致監禁。そりゃ、会長達だって送迎付けるわ!!」



……そう……言われると、結構やらかしているわね、私。

会長達から見て、私は自分の身を自分で守れない人間という認識になるのも頷けます。

……ふむ、屋上の件に関しては完全に私の落ち度ですし…。



「……分かりました。確かに私の落ち度もありますし、送迎に関しては認めましょう。ですが、学校の登下校のみにさせて頂きます。休日まで貴方方に煩わされたくありません」



これ以上の妥協は出来ません。

身の危険など自分で防ぐことは可能ですし、いざとなれば保護者達が全権力を駆使して、相手の事を消し炭にすることでしょう。



「……分かった。ただし、危険があればすぐに連絡しろ」

「分かりました、会長」



関わりたくはないのに。



「送迎係には琉生を付ける」



あ、そこは会長じゃないのね。

綾崎先輩はそれで良いのだろうか。

会長は全く確認とかしなかったけど……。



「……よろしくお願いします、綾崎先輩」

「よろしく〜」



受け入れているようなので構いませんが。



「お話以上でしょうか?」

「ああ」

「では、お暇致します。…心配してくださった事にはお礼申し上げます。ありがとうございました」



私の為に負わずとも良い傷を受けて助けに来てくれた。

私は傷一つ負わずに高みの見物決め込んで、相手の能力、技量を読み取るために有意義にあの部屋に留まっていただけ。

助けに来てくれたのは事に感謝はしている。

無駄なことだと理解もしているけど。

でも、彼らの心遣いには本当に感謝しているわ。



「何も無くてよかったよ」

「皆様方は治療なさってくださいね?……理紗、貴女は教室へ戻りなさい。授業中でしょう?」



当たり前のようにサボっているけど。



「え〜?めんどい」

「単位落としても知らないわよ?」



成績では無く出席日数不足で普通に留年しそう。



「……次の科目は出る」



それがいいわ。

ところで次の科目って何でしょうか?



「そうなさい。……では、また後日」



ペコリと頭を下げてドアノブに手を掛ける。

どうやら送迎は今日から適用されるらしく、綾崎先輩も立ち上がる。



「んじゃ、俺も今日は嬢送って帰るわ〜」

「ああ」

「ルー君、礼奈ちゃん、バイバイ〜!!気をつけてね〜!!」

「礼奈ちゃん、しっかり休んでね?」

「………」

「じゃあね〜、礼奈♪」

「またね、理紗。皆様方はお大事に」

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