第31話



「ついでに『椎名しいなさんのお手伝い』って、付け足しておいてもらえると助かるわ」

「…分かった」



コレで海の問題は解決ね♪

仮に椎名さんの方に海から連絡が行ったとしても、誤魔化してくれるだろう。


環がメールを送っているのを横目に私はポーチを開ける。

そのポーチの中身を見て、何故か環が固まった。



「……ッ!?…おいッ!それって――――――?」




………………。


……………………………。


……………………………………………。



あれから環と沢山話した。


薬で眠らされていたせいか、夜中だというのに眠くならなくて。

くだらない雑談に環を巻き込み時間を浪費していた。

環は文句を言わず、私の話に耳を傾け、自分の話もしてくれた。

そのお陰かとても仲良くなれた。


食事はデリバリーしたのを二人で食べて、そのまま雑談しながら夜を明かす。

それは以外と楽しかった。



気がつけば空が白み始めて。

完全に月が空の上から姿を消した頃。



「…さて、そろそろ時間だな」

「………何が?」



ソファから立ち上がった彼を見上げながら首を傾げると、環は呆れたように苦笑する。



「……礼奈?自分がどうしてここに居るか、覚えているか?」

「え?…ああ、そうだったわね」



平和過ぎて頭から消えていたわ。



「全く、俺達だからいいものの。他の奴らなら洒落になんねぇからな?」



咎めるような口調で言って、私の頭をくしゃくしゃと掻き混ぜる。

その一連の行動が“お兄ちゃん”みたいで。


私に兄が居たことは無いけれど。



「…じゃあ、紫蘭の連中に連絡するか」

「どうぞ?」



私の返事に環は悪戯いたずらっ子のような顔をして、スマホを耳につけた。



「………。よぅ、久し振りだな?」



会話の内容は気になるけれど。



「偉く気が立ってんなぁ?」



楽しそうな環の声。



「…預かってるぞ、お前らのお姫様」



………。



「……さぁ?来てみりゃいいじゃねぇか」



クツクツと低く喉で笑って、彼は一方的に電話を切った。



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