第16話

❄️礼奈❄️



「礼奈〜?どしたの〜?」



ぼんやりと英語の教科書を見るともなしに眺めていたら、眼の前で手を振られて顔を上げる。



「考え事?授業、終わってるよ?」

「ん〜?寝不足かな」



少しだけ首を傾げて私の顔を覗き込む理紗と眼が合って微笑する。

保健室で仮眠したるから身体的には多少はマシだけど。

もう最近では保健室がお友達だ。

私は理紗以外に友人を作るつもりはないから、静かな保健室は好き。保健医の松浦先生も好き♪

松浦先生、基本的に寝てるけどね…。

でもやっぱり自分の部屋じゃないと気が休まらないなぁ。



「……眠気覚ましに、この呼び出し受けようかなぁ?」



ぴらぴらと机の中に入っていた紙切れを指先で弄ぶ。

見るからに胡散臭いソレ。



「うん?馬鹿なの?ボコボコにヤられて終わりだよ?」



典型的な呼び出し状。

ホイホイ書かれた通りに行動すればどうなるかなんて、火を見るよりも明らかだけれど。



「…はいはい。戻って来なかったら、助けてね?」



4限と5限の間の休み時間という、何とも中途半端な時間に、呼び出されたことを疑問に思いながら席を立つ。


生徒会役員のメンバーに話し掛けられるせいで、最近女子生徒からの嫌がらせが多い。

生徒会役員にはバレないように。

でも今日みたいな呼び出しは初めて。


呼び出し場所として指定されていた屋上へ行けば。



「待っていたのよ、北見さん」



くすりと馬鹿にしたような声が聴こえた。

立っているのは見たことも無い女子生徒と以前トイレで会ったリーダー格の女子生徒だった。


外で話しましょうと促されて屋上へと出る。



「…何か御用ですか?」

「チョーシ乗んなっつったよね!?」



掴みかからんばかりに答えたのは、トイレで会ったリーダー格の女子生徒。

それにしたって、「チョーシ乗んな」しか言えないの?

前も言ってたわよね……?



「…そうね。聴いた気がするわ」



本当に聴いただけだけれど。



「アンタ、何様のつもり?」

「うぜぇっつーの!!」



……煩い。

そんなに好きなの、彼らのこと。

ただ顔が良いだけの連中じゃない。



「私なんて、抱いてもらった事もあるのよ?」



初めて会った女子生徒が自慢気に胸を張る。

くだらない女のマウント。

威張ることでも無い。抱いてもらったのに彼女にさえしてもらえない。

気がついているのだろうか。完全に遊ばれただけだと。

身売り行動して自分の価値を下げているだけだと。

それを私に伝えたところで、私には全く関係の無いことだし、彼らに対する私の評価が下がるだけだ。

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