第15話

「……うん。ありがとう」



もう…いいや。

言葉に甘えてお風呂に入ってこよう。

全然予想してなかった事になってるけど……。


それにしても礼奈ちゃんって面倒見がいいんだね?

普通、わざわざ関わりたくない人を家には上げないよ……。

礼奈ちゃんが何を思って俺を家に上げたのかは知らないけど、変わった子だね。


お風呂から上がれば、客間に案内された。

……旅館かな?

ふぅっと息を吐き出して、ベッドへ倒れ込む。

流石に色々疲れていた身体はすぐに睡魔に襲われる。


……桐斗に本格的に叱られそうだ。




翌朝。

普段よりも早くに目が覚めた。

自分の部屋じゃない事も早起きの原因だろう。

窓の外はまだ薄暗い。

携帯の時計を確認すれば、まだ時刻は午前4時47分。

二度寝する気にもなれなくて、そっとベッドから抜け出してリビングに向かう。

誰もいないと思っていたリビングからは、仄かに明かりが漏れている。

カチャリとドアを開けて中へと入ると、キッチンから物音が聴こえてくる。

そっとキッチンを見ると、礼奈ちゃんが一人作業をしていた。



「…おはようございます」



顔を上げて礼奈ちゃんが言う。



「おはよう。早起きだね」

「いつも通りです。先輩こそ早いですね」

「うん。目が覚めちゃって…」

「そうですか」



…あれ?

礼奈ちゃんって何時に寝て何時に起きたの?

まだ5時前なんだけど……。

“いつも通り”ってことは、この時間に起きているのが日常なんだろうけど。

…ちょっと身体が心配になるよね。

聞いたところではぐらかされるだけだろう。


生徒会役員だし、これから関わることが増えるだろうから、じっくり仲良くなれば良い。

例え、礼奈ちゃんにその気が無くても。




その後、礼奈ちゃんの弟妹達が起きてきて。

予想外に弟妹が多い事に少しだけ驚きながら、皆で朝食となった。

ご両親は一度も姿を見せることなく、礼奈ちゃんと登校することとなった。


学校に着くなり礼奈ちゃんが向かったのは、保健室。

見たところ体調が悪いわけでは無さそうだ。

体調が悪いなら初めから学校には来ないだろうし…。

確実にサボりコースだ。


躊躇うこと無く保健室へと入って行く姿を見るに、よくこの場所でサボっていることが伺える。

保健室の中には朝一の為か、珍しく起きている保健医の松浦まつうら先生。

保険医が起きている事自体は当たり前のことなのだが、この松浦先生は寝るのが至福と豪語するだけに、基本的に保健室で眠っている。


礼奈ちゃんはそんな松浦先生に挨拶して、一番奥の窓際のベッドへと歩いていき、そのままカーテンを閉めて、一人の世界へと消えて行った。


松浦先生はといえば、椅子に座り机に伏せるようにして、仮眠体制に入っている。

……この二人はこれでいいのだろうか?


取り敢えずは、仕事しろよ、保険医。






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