第14話

「俺の分もあるんだ」



くすりと肩を揺らした俺を礼奈ちゃんは見たけれど、何も言わず椅子を引いて座った。



「…お姉ちゃん、俺は寝るよ」

「ええ、ありがとう」

「おやすみ。宮元さんもごゆっくり」

「ありがとう、海君」

「おやすみなさい」



ひらひらと海君に手を振って見送ってから、礼奈ちゃんは俺を見て微笑んだ。



「食べましょうか、先輩」



夕食の献立メニューは。

おろしハンバーグに千切りキャベツとミニトマト、卵とわかめのスープに白米。



「…ところで礼奈ちゃんはなんで敬語なの?」



いただきますと、手を合わせて食事を始めた礼奈に聞く。



「先輩ですから」

「気にしなくていいよ?」



折角同じ生徒会役員なんだから、気にしなくてもいいのにと、微笑んでもにこりと感情の読めない笑みが返ってくるだけ。

礼奈ちゃんとしては、生徒会役員だからといって馴れ合う気は無いからこその敬語なのだろう。

結の事も徹底して無視みたいだし。


今日は沢山話してくれている方だ。


この子はなんていうか、不思議だ。

纏っている空気が、その存在自体が、泡となって消えてしまいそうで。

ふわふわと掴み所の無い子。



食事を終えて手を合わせたら、「お風呂沸いてますよ」と礼奈ちゃんに言われた。

……この子、俺のこと帰す気無いよね?



「礼奈ちゃんが入っておいでよ」

「やることがあるので、先にどうぞ」

「…何をやるの?」

「……色々です」



シンプルに答えて礼奈ちゃんは、食器を手にキッチンへと入って行く。

教えてはくれないらしい。

でも、もう11時を回って、12時近いけど。

これから何かやるなら確実に日付跨ぐよね?

その後にお風呂って、寝る時間ある?



「着替えなら誰も使っていない下着もありますから、大丈夫ですよ?」



誰もそんな心配はして無いよ。

何処をどう見たら俺が、そんな事で困っていると思うの?

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