第13話

「ん?」

「……寄って行きますか?」



顔色を変えること無く予想外の事を口にして、玄関に手を掛ける礼奈ちゃん。



「…いいの?」



驚いて聞き返してしまった俺に、「行く場所が無いのでしょう?」と、予想の斜め上を行く返答。

……ああ、うん。もしかして、礼奈ちゃんって捨て猫とか拾っちゃうタイプ?

でも俺、猫じゃなくて人間のしかも男なんですけど?

危機管理とか大丈夫?

心配になるんだけど……。

玄関開けて俺を待ってくれてるけど……。

ねぇ、お願いだからそんなに簡単に男を家に上げようとしないで……。


…まぁ、上がるけどね。



「お邪魔します」

「どうぞ」



家の中へと入れば、中学生くらいの男の子が顔を出した。



「おかえり、お姉ちゃん。…そちらの方は?」



グレーっぽい髪の毛と青緑の瞳。

整った顔には幼さが残っている。

礼奈ちゃんによく似た男の子。



「ただいま。学校の先輩よ」



俺達には見せない柔らかい笑顔で、弟さんに簡潔に俺の事を説明する礼奈ちゃん。



「宮元秀一です。よろしくね?」

北見海きたみかいです。中学2年生です。よろしくお願いします」



ぺこりと頭を下げる海君。

礼奈ちゃんはそんな俺達を無視して2階へと消えて行く。

取り残された俺を海君が苦笑しながら、リビングへと案内してくれた。


綺麗に片付けられたリビングには、とてもセンスの良い家具が配置されていた。

上品で部屋全体のバランスが計算され尽くされたお洒落な部屋。

見るからにお金が掛かっている。



「お好きなところに座ってください。……宮元さんは夕食は食べましたか?」

「いや、食べて無いよ」



余り食事に興味が無いんだ。

今日みたいな日は適当に何処かで買って食べるか、飲食店に入るかして食べているけど。

店に入る前に礼奈ちゃんに会ってしまったからな。

海君はそれだけ確認するとキッチンへと消えて行く。

俺は革張りのソファに腰を下ろす。


何もすることが無いので、大人しくし座っていると、礼奈ちゃんがリビングへと入って来た。

部屋着と思われるシンプルなワンピースに、着替えた礼奈ちゃんはそれはもう可愛らしい。

……これは…桐斗に怒られるな。



「先輩、ご飯ですよ」

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