第17話

彼女達は私と会長が付き合っていると勘違いしているのだから、浮気するような男と思わせて別れさせたいのかもしれないけど。

そもそも私と会長は付き合ってもいなければ、恋愛感情すらない。

どうして私を副会長に選んだのかは知らないが、誰よりも私が彼らに興味が無かったからだと思う。



「黙っているってことは、まさかまだ抱かれたこともないの?」



ケタケタと下品に笑い合う二人。

全く、誰しもが身体の関係を持つことを、望むとは思わないで欲しい。

会長に手を出されそうになったら、普通に通報するわよ。

そもそも、抱いてもらったって、セフレでしょう?

威張る事じゃないわよ。

まあ、納得しているならいいのよ?



「遊ばれただけなのに調子に乗ってその気になって、あの人達に媚売って!!…馬鹿みたい」



煩いなぁ。

いつまで続くの、この戯言ざれごと


抱かれただけで調子に乗っているのは誰なのか。

恋人にもしてもらえない哀れな人。

多分、抱かれた事で自分が特別だとでも勘違いしてるのかな?


それにしたって、彼女達と話していたらこっちが馬鹿になりそう。

もう黙ってて欲しい。



「黙ってないでなんか言えば〜?」



一人では何も出来ないのに、人数が増えるといきり立つお馬鹿さん。

相手をするだけで疲れるわ。



「…マジムカつく!」



何も言わない私に彼女達はイラついた様子で顔を顰める。

そのまま私の肩を思い切り両手で突いて、バランスを崩した私を横目にドスドスと屋上を出て行った。


バタンと閉まる扉の音。

そして、鍵が掛かる音がした。


……やられた。


どんよりとした空模様は今にも雨が降り出しそう。

確か、午後からは雨だとテレビの天気予報士が言っていた。

…なるほど、最初からそれが狙いか。

そういうくだらない悪知恵は働くのね。


仕方無く壁に寄りかかって座り込む。


そうしているうちにポツポツと雨が降り出した。

屋根の無い屋上では雨宿り出来る場所なんて無くて、冷たい雨に身体が濡れていく。

暖かい日も増えては来たが、まだ肌寒い春の気候。

冷たい雨に打たれながら、絶対に風引くなぁと他人事のように思う。

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