第9話
☀️結☀️
ふらっと教室を出て行った礼奈ちゃんは、お昼休み前に教室へ戻って来た。
礼奈ちゃんも理紗ちゃんも、何事も無かったように落ち着いた顔で授業を受けていて。
僕だけが少し驚いていた。
礼奈ちゃんは今教室には居ない。
理紗ちゃんはといえば、クラスの目立たない女子生徒達と楽しそうにお弁当を食べていた。
実は礼奈ちゃんを生徒会室へと誘ったけれど、ちらりと僕を見て何を言う事もなく教室を出て行った。
仕方無く僕は今、一人で生徒会室へと向かっている。
礼奈ちゃんを連れてくるように言われていたから、気は重いけれど。
生徒会室の中へと入れば、もう皆揃っていて。
礼奈ちゃんが居ないことを告げれば、口々に文句を言われた。
そんな事を言うなら、自分達で呼びに行ってよ……。
僕だって頑張ったんだよ!!
礼奈ちゃん、全然目も合わせてくれないし…。僕のことガン無視。
僕が話しかけてる横で、スマホ弄ったり本読んだり。
逆に理紗ちゃんは話しかけてくれるけど。
「…だからねぇ、僕だって頑張ったの!!」
空気扱いって辛いんだね……。
今日一日でしっかり味わったよ。
まさかここまで対応が塩だとは思わないじゃん!!
理紗ちゃんはそれを楽しんでるから、フォローしてくれないんだよ?
話しかけてくれるだけ。
「…彼女、猫みたいだね」
僕の不満話を聞いていた秀君が、誰に言うでも無くぽつりと呟く。
…確かに!?
ふらっと出掛けては戻って来る。
猫そのものだね!!
…残念ながらちっとも懐いてくれない、野良猫さんだけどね………。
「本当に俺達に興味が無いんだね」
面白そうに秀君は目を細めて笑う。
自分で言うのもなんだけれど、僕達は顔が整っている。
見た目で寄って来る女なんて沢山いる。
だけど興味を示さなかった人は会ったことがない。
反応さえ示さず、声すら発さない。
理紗ちゃんとは楽しげに会話するのに。
「そーだねー。もうちょっと真面目な子かとは思ってたけど」
…ま、でも会った時から結構変わった子だったけど。
不良に絡まれても笑顔だったし。
一応ルー君が助ける形にはなってしまった時も面倒臭そうにしていた。それに二人とも全く焦ってなかったんだよね。
騒ぎも暴れもしない。
授業をサボって、廊下ですれ違った先生に手を振って、帰って来てからも授業中は眠っているだけ。
……僕が人の事言えないけど。
この学校に首席合格したらしいんだけどね、礼奈ちゃんって。
だからこそ、真面目な性格なのかと思っていたけれど、そうでも無いらしい。
この学校は不良校だし、学校に最低限しか来ない奴らなんて正直大勢居る。
礼奈ちゃんも見た目はかなりの派手だ。
青緑色の瞳と銀色の髪の毛に整った容姿はまるでこの世の生き物というよりは、妖精や精霊などの神秘的な生き物に見える。
両耳にはルビーのピアス。
目立たない要素がない美人。
生徒会メンバーには無反応。寧ろ面倒臭そう。
僕達、女の子にあんな態度を取られたのは初めて。
だから、楽しみ。
何より桐斗君が彼女に興味を持った事には驚いたけれど。
でもきっと皆同じ。
礼奈ちゃんにあった瞬間、手元に置いておきたいと思ってしまったんだ。
生意気だけれど。
あの儚くて繊細な雰囲気に惹かれたのかもしれない。
月の雫を集めたような銀色の髪、澄んだ青緑の瞳。まるでイギリス人形のように整った顔立ち。
ふわりといつでも崩れることの無い笑み。
謎めいたとても不思議な空気を纏った女の子。
一言では言い表せないとても不思議な子。
「…ん〜?そこに居んの嬢じゃねぇか?」
ぷらぷらと火の着いて無い煙草を指先で
「どこ!?」
ぴょんっとソファから立ち上がって、ルー君の側へと駆けていく。
ルー君が差す窓の外を見る。
それは確かに礼奈ちゃんだった。
……多分、授業は始まっていると思うけどなー。
今日、礼奈ちゃん授業1回しか出てないよね。
生徒会役員だから、いくらサボっても問題は無いけどさ。
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