第8話

それから会うの2回目の人にあだ名を付けるのやめなさい?

天里君が驚いてるじゃない。

そりゃ、理紗はそれが普通だけどね?

理紗の普通が通用する人は、限られているのだから見極めなさいよ。



「珍しく優しいのね?」



貴方が他の人を気遣うなんてと、くすくすと肩を揺らす。

ま、理紗はあの色物集団気に入ってたものね。



「結っちもおはよ〜」



だからその呼び方…。



「あ…うん。…おはよ〜、紅矢さん」



戸惑ってるじゃない。



「理紗でいいよ。……結っちはこれから授業?」



……うん?

この子は一体何を言っているの?

皆これから授業よ。ここは学校なのだから。

ついに頭がおかしくなったのかしら。

出会った時からおかしかったけど……。



「…理紗、ちゃんもでしょ?」

「面倒臭くない?」



真面目に授業を受けようとしている人に何を言ってるの?

ほら、天里君の頭の上にクエスチョンマークが(笑)。

それにしたって理紗、初日からフルスロットル。

全力疾走。…可哀想に。



「…行こうか、礼奈。結っち、またね〜」



ひらっと手を振った理紗が先に教室を出て行く。

驚いて瞠目している天里君に苦笑して、理紗の後を追って教室を出る。

…初授業からサボりは駄目だと思うよ?



「早く行くよ」



廊下で私を待っていた理紗が、手招きして急かしてくる。

全く、待てが出来ない犬か何かなのかしら。



「……行く場所決まって無いのでしょう?」



慌てなくても行くわよ。

それに大声だしたら迷惑よ?


私の気の合う親友。

お互いにお互いの事を知っているからこそ、踏み込まないように距離を取る。

絶妙な距離感で付かず離れず、許せる範囲で内面を晒す。


私達は最初から“こう”だ。


冗談を言って本音を隠す。












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