第5話

振り返れば整った容姿の男子生徒5人組。

声を掛けてきたのは煙草を咥えた、藤色の髪の毛をハーフアップにした男子生徒。

……未成年の喫煙は法律違反よ?



「…ナンパ、ねぇ?」



すうっと瞳が細められ声が一段低くなる。

顔が整っているせいで途轍も無く怖い。



「…い、いえ…、校内を案内しようかと……」



柄の悪い先輩方が敬語に(笑)。

顔色も悪いし。

こういう人達って、立場が悪くなると目に見えて狼狽え出すのよね。

一生懸命に弁明する姿を見ている分には楽しいけれど。


どうして私を見つめてくるの?

そんな縋るように見つめられても何も出なくてよ。



「お断りしましたよね?」



私はさっさと家に帰りたいのだ。

やっと探検終わったところで、理紗が帰る気になってくれていたところだったのよ?

貴方達は邪魔しかしてこなかったのに私が助け舟を出すわけ無いでしょう。

軽く男達を睨みつけると、男達は真っ青になって逃げて行く。

……根性無しの癖に逃げ足だけは早いのね。

それにしたって何がしたかったのかしら?



「お嬢さん達、あ〜ゆ〜のは逃げなきゃ駄目だろう?喰われちまうよ」



ゆらゆらゆらゆら。

不思議な雰囲気で藤髪の先輩は笑う。



「…それは大変ですね」



先輩のお陰で助かりましたけれど。

それにしたってこの方々は何者何でしょうか?

見れば見るほど色物集団ね。

もう全員でホストクラブでも開けばいいのに。きっと繁盛するわよ?



「……おい、お前」



あら?今度は黒髪さん。

今日は変な人達に絡まれるわね。

厄日かしら?

お祓いが必要?帰ったら塩撒いておきましょう。


切れ長の瞳にサラサラの黒髪。まるでお人形のように整った顔立ちの男子生徒。

5人組の中では一番存在感があるというか、貫禄があるというか。まぁ目立っているわ。


……お前って、私のこと?

…私、よね?……何かめちゃくちゃ見られてるし……。



「…何か?」

「投票用紙に何も書かなかっただろ?」



…うん?え?

それだけ?

呼び止めてまで聞きたいことって、そんなくだらないこと?



「書きませんでしたけど?」



何か問題でも?

絶対に一人は投票しなくちゃいけないなんてルール無かったはずよ。

それに女子生徒は大勢いるのよ。私一人書かなくたって問題無いでしょう。



「はぁっ!?そんな事したの!!?馬鹿なの?書かないなら私に用紙頂戴よ!!!そしたら受けバージョンのランキングも付けられたのに!!」



私の言葉に誰よりも過剰に反応したのは理紗。

そう、この子は見た目クール系、中身は自他共に認めるオタク。

喋るとイメージが崩れる変わった子。

少し残念な美少女なのだ。


………うん。



「……あー…ごめんね?」



そんな事思い付きもしなかったわ。

来年からはそうしようかな。

理紗が煩いからね。

投票自体は私がしても理紗がしても問題は無いだろうし。



「……なぁ?お前、俺の女になれ」



………。

……………。

……………………。

…………………………幻聴?

…え?

……思考がショートしかけたわ。

危ない、危ない。

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