誰も知らない祠

しき

第1話

 とある山にある祠の近くで焼死体が発見された。全身が丸焦げで顔が分からない。近くの村でいなくなった人もいないのでこの遺体が誰なのか全く分からない。

 何でこんな所で丸焦げになったのかも不思議である。火元も分からない。遺体以外に何かが燃えた様子もない。

 そもそもこんな山に立ち寄る理由も分かりはしない。祠だって今や誰も拝むどころか手入れもしてない寂れた祠だ。

 この祠に祀られていた神様だって今やほとんどの人が憶えてねえ始末だ。

 もしかしたら今回の件はその神様の祟りかも知れねぇな。なんたって祀られていた神様は…


「神様の名前は鳴雷なるいかづちですよね。雷神の一人。まぁ、本当は違うんですけど異国の発音がこの国では合わなくてその神様として祀られてしまったんですよね」


 年寄り達の噂話に花が咲く中、気がつくと見知った若者の一人がそこにいた。はてお前さん若いのに良く知っておるな。今じゃあ年寄りでもわしぐらいしか知らぬ話よ。しかし、本当は鳴雷なるいかづちではないというのは何だ。そんなのこと聞いたことないぞ。嘘言っちゃあいかんよ。


「嘘じゃあないですよ。私は●●●●●●●●って名乗ったのに長いせいか簡略されたのが伝わってしまってその内に全く別の神様の名前にされてしまったのですよ」


 何だその変な名前は。そんな神様どこにいる。聞いたことねえぞ。もしいたとしたら姿を拝みたいもんだな。はははは。


「失礼な。目の前にいるじゃあないですか」


 そう言った目の前の見知ったはずの若者の顔は底が見えない真っ黒な空洞になっていた。

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誰も知らない祠 しき @7TUYA

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