第11話
「朝倉ってさ、あの市川先輩と付き合ってるんだろ?」
自分の席に着いた時、後ろの席にいた同じクラスの男子生徒にそんな声をかけられた。
「“あの”ってどういうこと?」
こういう時、大抵は悪い意味の言葉でしかないと経験から悟った伊吹は、相手を睨みつけるようにして振り返る。
しかし、相手は臆する様子を見せず、
「校内一の美人で有名な、ってこと。年上で色っぽいし、恋愛経験も豊富そうだし……色々教えてもらってるんだろ?」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。
「やっぱあれだけの美人ってさ、ベッドで乱れてる時も美人のまま? それとも可愛らしい感じで甘えてきたりするの?」
「……ミヤをそういう目で見るな。次、変なこと言ったら両目にペン突き刺すぞ」
脅しではなく本気でそうしてやるつもりで、怒りで震える右手でペンケースを握り締めた伊吹を見て、
「なんだよ。とっくに童貞卒業してんだから、恥ずかしがることないだろ。減るもんでもねーし」
つまんねーヤツだな、とボヤいた男子生徒は、ふいっと彼から顔を背ける。
(やっぱり友達なんて要らない。不快なだけだ)
はぁーっと露骨に大きな溜息をついてペンケースを机に置いた伊吹の隣の席にいた女子生徒が、先程のやり取りを聞いていたのか、
「やだよね、あーいうの」
彼に小声でコソッとそんなことを伝えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます