第10話

親友の気持ちも考慮して、風香はなるべくすぐに彼から手を離したのだが、



「邪魔しないでくださいよ、南先輩」



伊吹は都古以外の女性に触れられるのが相当に嫌なのか、ほとんど睨むようにして風香を見る。



「いや、だからここ学校なのよ」



「……確かに。ミヤの色っぽくて可愛い姿を他の人には見せたくないですしね。我慢します」



「いや、だから納得の仕方が変なのよ、朝倉くんは!」



「それほどでもないですよ」



「褒めてないし! ミヤちゃんからも何か言ってよ!」



風香は呆れ果てて都古に助けを求めたが、



「……っ」



都古は恥ずかしそうに両手で顔を覆った姿勢で動けずにいた。



「あぁ、もう。本当に可愛い」



伊吹が都古へと、愛おしそうな優しい笑みを向けて、



「もういいから、そろそろ自分の教室に戻りなさい。チャイム鳴るわよ」



風香が教師のような台詞を吐きながら、二人の間に割って入る。



今のうちから優秀な成績を収めて少しでも将来を有利にしたいと考えている伊吹は、



「分かりましたよ。ミヤ、また後で来るね」



都古の髪に一瞬だけ優しく触れてから、名残惜しそうに何度も彼女を振り返りながら教室を出た。



中等部の校舎へ戻る道中、



(友達、かぁ……)



必要ないだろうとずっと考え続けていた存在へ、思いをせる。



風香と楽しそうに過ごしている都古を見ていると、確かにいいなとは思うが……

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