第6話

昨年都古と同じクラスだった生徒にとっては見慣れた光景なので、“あぁ、相変わらず来たのか”くらいにしか思っていないが、他のクラスだった生徒は噂には聞いていても実際に目の当たりにすると違和感を感じる模様。



それも、きっとあと半月も経てば見慣れるのだろうけれど。



「来年の今頃はミヤちゃんこの学校卒業していなくなるのに、今からそんなんでどうするの?」



呆れたように笑う風香に指摘され、



「想像しただけで絶望的ですね……」



伊吹はガックリと項垂れて本気で死にそうな表情を見せる。



「……あと4年くらい留年してくれない? ミヤ」



「絶対に嫌よ。何言ってるの」



伊吹からの無茶なお願いに、都古も苦笑するしかない。



「ミヤちゃん、成績優秀だから登校拒否でもしない限りは単位落とすことはありえないもんね」



都古の父親は高校教師、兄も小学校教師で、その兄のお嫁さんもとても頭のいい人で、そんな三人に小学生の頃から代わる代わる勉強を見てもらっていた都古は、当然のことながら成績がいい。



「登校拒否か……それならしばらくの間、ミヤを僕の部屋に軟禁して……」



ふむ、と顎に手をやり真剣に悩む表情をする伊吹を見て、都古の喉がひゅっと鳴る。



「い、イブくん?」



都古の背筋を冷たい汗が流れたが、



「冗談だよ。ただの願望だけど、口に出すくらいなら自由でしょ?」



伊吹はニコニコと爽やかな笑顔を浮かべた。

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