第83話

このバッグを買ったその日に、あらかじめ入れておいたメモ用紙がバッグの内ポケットにあるのを思い出す。



『お土産リスト』と書かれたその紙には、両親や兄たちに混じって俊の名前が書いてあるのを見つけてしまい、



「……」



都古はすぐにその紙を手の中で小さく丸めて、ゴミ箱に放り込んだ。



(大丈夫。家族の分と美紅ちゃんと、朝倉くんの分だけだもん。覚えたわ)



涙が出そうになったのは、一瞬だけ。



都古の辛い気持ちは先程、伊吹がたくさん受け止めてくれたから、まだしばらくは泣かなくて済みそう。



年下でも頼りになる人はいると言う兄の言葉が、今更になって身に染みる。



「……よし」



気合いを入れ直した都古は、ショートパンツのポケットに入れていたスマホを掴んで取り出すと、



『明日、ふーちゃんと私と朝倉くんの三人でお揃いのグッズ買わない?』



風香にメッセージを送った。



すると、すぐに返事が来て、



『いいねー! 三人でお揃いのカチューシャ付けて登校しよー!』



「えっ? カチューシャ?」



驚きのあまり、心の声がそのまま出る。



「……ま、いっか」



今ここで彼女にどうこう言ったところでどうにもならないので、とりあえず今はそっとしておくことにする。



(うん。楽しみになってきたわね)



落ち込んでばかりで楽しむ余裕なんてないかもと思っていたので、やはり持つべきものは友達だな、と痛感した都古であった。

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