第82話

(朝倉くんは、私の悲しそうな顔は見たくないって言ってたけど……私も、朝倉くんのああいう顔は、出来れば見たくないな)



彼と同じ気持ちにはなるものの、それがイコール好きだとは、どうしても言い切れる自信がなくて。



(……まだ失恋したばっかりだもの。今の状態で、分かるわけないわよ)



今はとにかく悲しくて寂しくて、誰かに傍にいて欲しいという気持ちが強いから。



それに、



(あんな風に抱き締められたら、余計に自分の気持ちを勘違いしそう……)



正常な判断が出来ない状態の都古には、この答えを出すにはまだハードルが高すぎる。



とりあえず、今日はもうこれ以上考えるのはやめにしよう。



(明日はせっかくのバス遠足なんだし、気持ち切り替えて行こ)



明日の服装は制服だが、持っていくバッグに指定はない。



なのでこの日のためにと、風香とお揃いのショルダーバッグを用意してある。



やっとソファーから立ち上がった都古は自室へと向かい、制服を脱ぎ捨てて部屋着に着替えてから、



「さぁて、荷造りだ!」



クローゼットの中から引っ張り出したショルダーバッグへ、必要なものを詰め込み始めた。

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