第70話
リップクリームとスマホの画面を寂しそうに見つめる都古を、右京が車を運転しながら横目でちらりと見て、
「都古」
思わず声をかけた。
「相原はオススメしないって、だから言っただろ」
「……」
俊のことを諦められたわけではない都古には、そんな言い方をされても彼のどこがダメなのかが理解出来ない。
今だって、何故突然フラれることになったのかが分からなくて、混乱しているのに。
「都古のことだけを真っ直ぐに見てくれる男は絶対にいるから。相原のことは、とりあえず一旦忘れろ」
「一旦? ずっとじゃないの?」
「都古のことを本当に大切にしてくれるやつと付き合ったら、自然と他の男のことなんて考える余裕はなくなるはずだからな」
現在進行形で幸せな恋愛をしている兄が言うのだから、きっと間違いないのだろうけれど、
「案外、もうそういうやつが都古のすぐ近くにいたりしてな」
「それはないよ」
からかうようにニヤリと笑いながら言われたその台詞には、速攻で否定した。
「何だ。意外とモテないのか、お前」
運転する兄の横顔は、実の妹である都古ですらも格好良いと思うのに、
「モテるからって絶対に両想いになれるとは限らないの!」
意地悪としか取れないその台詞に、都古はむぅっと頬を膨らませる。
「ふぅん。俺は伊吹とか結構いいと思うけどな」
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