第67話

震える両手で俊の胸を押して、彼をそっと突き放した。



「あの……私も、これ以上は初めてなので……もう少しゆっくり進めていただけるとありがたい、です」



決して俊のことを拒絶したわけではないのだと、そこだけは誤解して欲しくなくて、都古は潤む瞳で彼を見つめる。



「えっ!? あ……」



ハッと我に返ったらしい俊は、慌てて都古から離れて、



「ごめん……何か……一瞬、理性飛んでた」



彼女を襲うつもりなど全くなかった俊は、自分のしでかしたことにショックを受けて、俯いた。



都古は自分よりも年下で、しかもまだ高校生で。



とっくに成人している自分がまだ幼さを残す彼女に触れることは禁忌のことのようにも感じていたが、彼女自身は既に他の人たちと経験しているものとばかり思っていた。



(いや……都古ちゃんに経験があろうとなかろうと、そんなことは関係ない)



一番気にしなければいけなかったのは、彼女の気持ちだというのに。



先程の自分には、そこまで考えられる程の余裕は全くなかった。



そもそも、都古に対して恋愛感情があるかどうかすら分からないと言ってしまったばかりなのに。



このままでは、ただ自分の欲望を満たすためだけに、彼女を利用して傷付けることになってしまう。



それだけは嫌だと思うのに、自分で理性を保ち続けられる自信がない。



「ごめん、都古ちゃん……やっぱり別れよう」



きっと、今はこうすることでしか、自分という獣から彼女を守る方法はないと判断した。

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