第67話
震える両手で俊の胸を押して、彼をそっと突き放した。
「あの……私も、これ以上は初めてなので……もう少しゆっくり進めていただけるとありがたい、です」
決して俊のことを拒絶したわけではないのだと、そこだけは誤解して欲しくなくて、都古は潤む瞳で彼を見つめる。
「えっ!? あ……」
ハッと我に返ったらしい俊は、慌てて都古から離れて、
「ごめん……何か……一瞬、理性飛んでた」
彼女を襲うつもりなど全くなかった俊は、自分のしでかしたことにショックを受けて、俯いた。
都古は自分よりも年下で、しかもまだ高校生で。
とっくに成人している自分がまだ幼さを残す彼女に触れることは禁忌のことのようにも感じていたが、彼女自身は既に他の人たちと経験しているものとばかり思っていた。
(いや……都古ちゃんに経験があろうとなかろうと、そんなことは関係ない)
一番気にしなければいけなかったのは、彼女の気持ちだというのに。
先程の自分には、そこまで考えられる程の余裕は全くなかった。
そもそも、都古に対して恋愛感情があるかどうかすら分からないと言ってしまったばかりなのに。
このままでは、ただ自分の欲望を満たすためだけに、彼女を利用して傷付けることになってしまう。
それだけは嫌だと思うのに、自分で理性を保ち続けられる自信がない。
「ごめん、都古ちゃん……やっぱり別れよう」
きっと、今はこうすることでしか、自分という獣から彼女を守る方法はないと判断した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます