第65話

「やっぱり、私のこと好きじゃない……?」



今まで答えを聞くのが怖くて避けていた質問を、初めてした。



「……都古ちゃんのことは、凄く可愛いと思うし、好きではあるけど……それが恋愛感情なのかって聞かれると、正直自信はない」



「……」



「でも、だからって別れたいとも思ってなくて……都古ちゃんが、こんな曖昧あいまいな俺でもいいって思ってくれるなら、このままの関係でもいいし……都古ちゃんに他に好きな人が出来た時は、その相手のことを選んでくれてもいいし」



こちらのことを気遣って、一生懸命に言葉を選んでくれているのだろう。



その優しさは理解出来るのだけれど、



(なんて、ズルい人なの……?)



結局は彼は、自ら都古に何かをするつもりはないということ。



都古に決定の自由を与えているように見えて、実は都古に全てを投げ出しているだけ。



「私は、俊さんが大好きだから離れるつもりはないわ。でも……“このままの関係”でいいとも思ってない」



せっかく本音を語り合える機会を得られたのだから今日こそは、と都古は今にも溢れ出そうな涙を堪えて言葉を紡ぐ。



「大好きな人にはいっぱい触れたいし、触れて欲しいもの」



今まで恋人らしい触れ合いが一切なかったので、“妹のような存在”から抜け出したいことを訴えてみた。

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