第63話

――そして、俊と会える約束の日。



この日は、俊の暮らしている寮の部屋に少しだけお邪魔させてもらうこととなった。



俊との予定が合ったのは平日だったので、都古は学校が終わってから私服へと着替えて彼の元へ。



俊に、都古が制服で出入りすると周りの人の目が気になると言われたので、学校帰りに彼と会う時は通学鞄に私服を押し込んでいるのだ。



しかも今日は、大人な俊に少しでも近付きたくて、色付きのリップクリームも塗ってみた。



今までコスメに疎かった都古には、濃く発色する口紅はハードルが高すぎるので、薄く色付く程度のリップクリームにしてみたのだけれど……



果たして、彼は気付いてくれるのかどうか。



ちなみに、先生から注意されるのを覚悟で学校にも塗って行ってみたのだが、気付いてくれたのは風香と伊吹の二人だけだった。



風香は、



「ミヤちゃんがリップ塗ってる! 珍しー! 今日デート!?」



と目をキラキラさせ、



「都古先輩って、ピンクのリップも似合いますね。凄く可愛いです」



伊吹は頬をポッと赤く染め、甘く微笑んでいた。



……まぁ、伊吹に関しては口説くのが通常の会話スタイルになっているのと、何より華やかな見た目をしているので、そういう台詞もよく似合っていて違和感がない。



「そ? ありがと」



だから、ここはさらりと流しておく。

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