第62話

(どうりで最近、やたらと睨んでくる人が増えたわけね)



睨まれる覚えなど全くなかった都古は、でもまぁ自分は女子に嫌われやすいタイプだからなぁ、と考えてあまり気にしてはいなかったが。



睨まれる原因が分かって少しだけ納得は出来た。



きっと、伊吹のことをきちんと突き放せていない自分が全て悪いのだろう。



そう思えるからこそ、睨んでくる女子たちを迷惑だとまでは思わない。



「ねぇ。本当に、朝倉くんじゃダメなの? ドライって噂の市川さんの彼より、あの子の方が溺愛してくれると思うわよ?」



「なっ……そんな噂が流れてるんですか!?」



先輩の言葉に、都古が激しく動揺してみせると、



「ありゃ。その反応から察するに、事実なのね」



先輩は少しだけ驚いたように丸くした目で都古を見た。



「もーいーじゃん。この際、甘々年下彼氏にしとけば」



「や、あの……私は彼氏のこと大好きなので」



この場合、周りの意見よりも、本人たちの気持ちが一番大事なのではなかろうか。



“本人たち”と言えば――



(本当に、俊さんは今の関係をどう思ってるんだろ)



ゆっくりでもいいから、二人でしっかりとした絆を築いていけたら……というのが、都古の願い。



(もっと、ちゃんとお話しなきゃ)



そのためには、二人でお互いの想いをよく話し合うことが大事だと思う。



都古は意を決して、ずっと悩んでいた俊へのメッセージを送ることに決めた。

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