第61話

――部活動終了後。



「市川さん!」



部室の後片付けをしている都古のもとに、三年の女子部員の一人が笑顔でやってきた。



「今日は美味しいお菓子の差し入れ、ありがとうねー」



「あ、いえ。あれは私ではなく中等部の子からのお土産で……」



「知ってる、知ってる。市川さんのこと大好きなあの超絶イケメンくんでしょ?」



そんな風に言われ、



「えっと……」



都古の頬が自然と赤く染まる。



「一途よねぇ。すっごくモテるのに、女の子からの告白全部断ってるんでしょう?」



「……え」



先輩のその一言で、茶碗を洗う都古の手がピタッと止まった。



伊吹は確か、女の子からの告白はそんなにないと言っていたのに。



……いや、待て。



“全くない”ではなく“そんなにない”ということは、それなりにはあるという意味で……



「……あの子、そんなに人気あるんですか?」



伊吹は、都古の前では女の子の影なんて全く見せないので、モテるんだろうなーとは思うものの、そこまで実感としては湧いていなかった。



「人気あるっていうレベルじゃないわね。中等部だけじゃなくて、高等部の女子ですらも、あの子にフラれたって泣いてる子凄く多いわよ?」



「ひえぇ……」



「でも、朝倉くんの好きな相手が市川さんだって聞かされたら、諦めるしかないわよねー」

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