第58話
彼の目を見ることが出来ず、視線は自然と紙袋の方へと落ちていって、
(あ……和菓子だ)
食べたことはないが名前だけはよく知っている有名和菓子店のロゴが見えた。
今日の部活で
「残酷、とは?」
不思議そうな彼の声に、少しだけ
「中途半端に優しくしないで欲しい、とか変な期待させないで欲しい、とか、そんな風に思ったことない?」
紙袋から視線を上げて、伊吹をちらりと見る。
すると、彼はこちらを睨むような鋭い目つきをしていて、
「それって、都古先輩がシュンサンにそういうことをされてるってことですか?」
都古の方へと一歩、ずいっと詰め寄ってきた。
ここまで近付いて見下ろされて初めて、彼の方が都古よりも若干背が高くなっていることに気付かされる。
(少し前までは、私よりちょっと低いくらいだったのに)
そんな関係のないことを考えてしまって、
「……僕は、都古先輩に対してそんな風に思ったことは一度もないです。仮に先輩のそれが中途半端な優しさだとしても、僕は嬉しいとすら思っています」
とても優しげな彼の声に、都古はハッと我に返った。
「変な期待をさせないようにと冷たく突き放されてしまったら、僕のことを見てもらえる機会も減ってしまいますからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます