第56話

でも、このままではダメだと、付き合い始めた頃からちゃんと分かっている。



「俊さんとは一ヶ月過ぎても続いてるんだからさぁ……今回は特別なんじゃない?」



風香の言っていることがよく分からなくて、俊にメッセージを送ろうとしていた都古は、スマホから顔を上げて目の前の親友を見る。



「前までの人と、俊さんとの違いは何なの?」



「……」



過去の恋人たちと比べたことなんてない都古には、そんなことが分かるはずもないが、



「私には、前までのミヤちゃんと、今の俊さんが似ているように見えてるよ」



「え……」



「前までの元カレたちと、今のミヤちゃんが似ているとも思う」



「……」



「温度差、っていうの? 追いかけてる側と追われてる側で、凄く差があるように見えるの」



風香の言葉は、何故か都古の心の奥底に、ストンと綺麗に落ちてきた。



「……そっか。俊さんってやっぱり、私のことそんなに好きじゃないんだ……」



都古の告白を受け入れてくれたのだから、きっと嫌われてはいない。



けれど、ただそれだけ。



都古の望んでいる関係とは、大きくかけ離れているのだ。



うるうると潤み出した都古の瞳を見て、



「あ、でも! 俊さん、口下手なだけで、上手く感情を表現出来てないだけかもしれないし!」



風香があわあわと両手を振って補足を入れたが、



「ふーちゃん、もういいの。期待すればするほど、後でしんどくなっちゃうから」



都古は涙を堪えたまま、寂しそうにふわっと微笑むだけだった。

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