第51話

「趣味じゃないのにって思いながら嫌々受け取られたら悲しいじゃない」



「大好きな彼女が選んでくれたのに、そんな風に思うかなぁ?」



風香は本当に不思議そうに首を傾げたが、



(“大好き”どころか、“好き”とすら言われたこともないのに)



最近では、都古は彼に対してますます強い不安を感じているのだ。



お互いの呼び方も付き合う前と同じ“俊さん”、“都古ちゃん”のまま。



デートらしいデートも、ほとんどしていない。



一度だけ、俊の暮らしている寮の部屋にお邪魔させてもらったこともあるが、彼はキスどころか手を繋ぐことすらしてくれなかった。



スキンシップと言えば、付き合う前と同じ、妹にするような頭をナデナデする行為だけ。



付き合い方というものに決まりなんてないのは分かっているし、俊に自分の理想を押し付けるつもりもない。



けれど、



(付き合う前と、何も変わってないのよね)



寂しい気持ちが全く埋まらないのがとても辛い。



「ねぇ。そういえば、ミヤちゃん、昨日朝倉くんに連絡先聞かれてたよね?」



都古の暗い表情に気が付いていた風香は、無理矢理に話題を変えようと、思い出したように手をポンと打つ。



「え? あぁ……」



都古自身も気が付いていなかったのだが、伊吹とは連絡先の交換をしておらず、昨日初めて彼の方からそのことを指摘されたのだ。

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