温度差

第50話

「バス遠足かぁ……なんで梅雨時に行くのかなぁ」



HRで、もうすぐ行われるバス遠足の班決めやら注意事項の説明やらが終わり、その後すぐの休憩時間中、机の上で頬杖をついた都古がぼそりと零す。



「雨降ってたら楽しめないよ、テーマパークなんて」



ダルそうに文句を垂れる都古の前の席に、



「梅雨時に学校行事みたいな大きい団体客は料金が安くなるって聞いたことあるよ」



風香がよいしょと腰を下ろした。



「なになに? 学校で行くくらいなら、俊さんと行きたかった?」



からかう気満々で身を乗り出してくる風香を、都古がじろりと睨む。



「プライベートなら、ふーちゃんと行きたかったわよ」



付き合って間もない彼氏――しかも、滅多に会えない人とテーマパークデートなんかすれば、間がもたずに楽しめないことは分かっている。



あの行列に並ぶのは、信頼関係がしっかりと出来ているカップルでないと無理だと思うから。



「……俊さん、お土産どんなのが欲しいか聞いても“俺のことは気にせずに楽しんできて”って言うんだもの。お揃いのキーホルダーを一緒に持ちたいだなんて言い出しにくくて」



「勝手に選んで渡しちゃえばいいんじゃないの?」



それはそれでいいサプライズになりそうだと思って風香は言った。

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