第49話

都古の精一杯の捨て台詞に、



「それなら尚更、都古先輩の中でインパクト強めに映ってますよね? 僕」



伊吹が嬉しそうに自分の顔を指差して、



「癖が強すぎるのよ、あなた」



呆れ果てた都古は、何だか悩んでいるのも馬鹿馬鹿しくなってきて、パックジュースのストローを再び口にくわえた。



「それ、もちろん褒めてくださってるんですよね?」



「解釈の仕方は任せるわ」



「いい風にしか捉えませんからね、僕は」



機嫌良さそうに微笑みながら、伊吹もジュースのストローをくわえる。



二人でのんびりと飲み終えてから、



「さてと。私はそろそろ部活行かないと」



都古は潰した紙パックをゴミ箱に放り込み、天井に向かって両腕を伸ばしてググッと伸びをする。



「あ、えっと、僕は……」



少し遅れて自分の紙パックをゴミ箱へと捨てた伊吹が、慌てて自分の鞄を担ぎ直して、



「朝倉くんは帰宅部でしょ? 気を付けて帰るのよ」



都古が足元に置いていた鞄を拾い上げて肩にかけると、反対の手をひらひらと彼に向けて振った。



そのまま部室の方へと向かう都古の背中を見送りながら、



「はい……先輩も、帰る時はお気を付けて」



本当は彼女の部活動が終わるのを待って、家まで送ってあげたいと思っていた伊吹なのだが、



(流石にそれは気持ち悪がられる、かなぁ)



やはりそれは自分の役目ではないと思い至る。



仕方なくきびすを返し、伊吹は一人寂しく帰路についた。

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