第48話

「もう二度とあんな思いはしたくないので、今は全力で伝えています」



伊吹の真っ直ぐすぎる視線は都古には鋭すぎて、思わず目を逸らした。



どこを見ればいいのか分からず、とりあえず手元にあるジュースのストローの先を見つめる。



「全力で来られても、私は朝倉くんの期待には……」



「最初から、いい答えなんて期待していませんよ。僕はただ、伝えたい相手が目の前にいるから伝えているだけで……たとえ自己満足でしかなくても、直接伝えることが出来るというだけで、僕は幸せなんです」



「……」



何とも言えない表情でストローの先を見つめ続ける都古を、相変わらず真っ直ぐに見つめている伊吹が、



「でも、せめて一つだけお願い事を聞いてもらえるのでしたら……そんな悲しそうな顔じゃなくて、もっと楽しそうに笑っている先輩を見ていたいです」



眉尻の下がった寂しそうな顔でふわりと微笑んだ。



「……!」



ハッとして顔を上げた都古とやっと目が合い、



「ありきたりな日本語ですけど、都古先輩は笑顔の時が一番素敵です」



伊吹は、今度は照れくさそうに頬を染めながら微笑む。



「ありきたりって……今時そんなこと言う中学生なんていないわよ」

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