第48話
「もう二度とあんな思いはしたくないので、今は全力で伝えています」
伊吹の真っ直ぐすぎる視線は都古には鋭すぎて、思わず目を逸らした。
どこを見ればいいのか分からず、とりあえず手元にあるジュースのストローの先を見つめる。
「全力で来られても、私は朝倉くんの期待には……」
「最初から、いい答えなんて期待していませんよ。僕はただ、伝えたい相手が目の前にいるから伝えているだけで……たとえ自己満足でしかなくても、直接伝えることが出来るというだけで、僕は幸せなんです」
「……」
何とも言えない表情でストローの先を見つめ続ける都古を、相変わらず真っ直ぐに見つめている伊吹が、
「でも、せめて一つだけお願い事を聞いてもらえるのでしたら……そんな悲しそうな顔じゃなくて、もっと楽しそうに笑っている先輩を見ていたいです」
眉尻の下がった寂しそうな顔でふわりと微笑んだ。
「……!」
ハッとして顔を上げた都古とやっと目が合い、
「ありきたりな日本語ですけど、都古先輩は笑顔の時が一番素敵です」
伊吹は、今度は照れくさそうに頬を染めながら微笑む。
「ありきたりって……今時そんなこと言う中学生なんていないわよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます