第47話

「そりゃあ、私にとって朝倉くんは弟同然に可愛がってきた幼なじみだからね」



実の兄弟は兄だけで、“姉”という立場に憧れていた都古にとって、伊吹は実の弟のように可愛くて大切な存在だった。



――まぁ、幼かった頃は彼を女の子だと勘違いしていたので、正しくは“妹”のように思っていたのだが。



自分が可愛がっていた彼に慕われるというのはとても嬉しいし、出来ることなら突き放すようなことはしたくないのだけれど、



「……僕は、都古先輩と初めて会った日のことは覚えてないんですけど、一番古い記憶では、既に先輩のことを好きになっていました」



このままではいけないと思うので、心を鬼にしなくては。



「あのね、朝倉くん――」



「都古先輩は僕の気持ちを認めたくないのかもしれませんけど、この感情は僕のものです。いくら都古先輩でも、これを否定することだけはやめてくださいね」



「……っ」



先手を打たれ、都古の言葉が止まった。



「ずっと後悔してたんです。都古先輩に“好きです”って言わなかったこと。まさか、こんなに長い間会えなくなるなんて思ってもみませんでしたから」



都古よりもずっと小さかったはずの彼の目線は今では同じくらいの高さになっていて、じっと見つめられると身動きが取れなくなる。

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