第46話

「えっと、はっきり何人って決まってるわけではないんだけど……朝倉くんのこと、いいなぁって思ってる女の子は凄く多いと思うわよ」



自覚のないモテ男に、他にもチャンスが沢山あることを知ってもらうにはいい機会だと思った都古は、ゆっくりと諭すように話す。



それがきちんと伝わったかどうかは不明だが、



「……僕は、自分の好きな人にさえ好いてもらえれば、他はどうでもいいんです」



何故か伊吹は忌々しそうな表情を見せた。



「昔、僕の髪と目の色を気持ち悪いって言っていた子が、今更色目を使ってきても気味が悪いだけですから」



「帰国して早々、そんなことあったんだ?」



都古は苦笑しながら、そういえば小さい頃の伊吹はいじめられっ子で、よく自分が助けに入っていたな、と思い出す。



「今も昔も、変わらずに接してくださるのは都古先輩だけですよ」



そう言って都古を見つめてくる伊吹の目線は熱い。



……彼が都古に執着するのは、異国の血が混ざった者同士だから、という理由ではないかと都古は思う。



混血児というだけで、周囲からの扱いに差があるというのは、きっとそれを受けた本人たちにしか分からない。



それを分かち合える相手もとても限られてくるから、一種の仲間意識のようなものを恋だと勘違いしている可能性も少なくはない。



伊吹の場合はまさにそれなのではないか、というのが都古の見解だ。



彼のことを傷付けず、それとなく恋ではないのだと気付かせてあげなければ。

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